梓澤和幸が 「石に泳ぐ魚」 事件に関して 『週刊金曜日』 に載せたコメントを掲載します。
人間としての尊厳の回復にささげられた原告女性の八年の歳月と到達は、少なからぬ人々に励ましを与えたと信ずる。最高裁判決はプライヴァシィ侵害のおそれのある場合、私人の私的事項に厳しく限定した上で差し止めを認めた。 文学表現の危機などとする言説がある。しかし、モデルの了解もないまま、小説の登場人物と現実の人間の特徴を一致させて私事を暴くことが問題とされているのだ。この小説は 「人格を全て否定された」(判決)、と感じさせるほど人を傷つけた。こんな加害が作家の特権としてまかり通る時代ではない。 |