トピックス   梓澤和幸

安保法案強行採決の夜 国会へ向けて抗議の行進

文・写真 ジャーナリスト 写真家 尾崎 孝史 2015.9.21

  安保法案が参院特別委員会で強行採決された9月17日。国会正門前の歩道に30人ほどの若者が集まっていた。
  彼らは、安保法案に反対する学生らのグループ 「SEALDs」(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)や、 高校生のグループ 「T-ns SOWL」(ティーンズ・ソウル)だ。
  「国会の中には僕らの声が聞こえているそうです。これから、できることをやっていきましょう」
  デモの冒頭こう訴えたのは、SEALDsの中心メンバーの一人、明治学院大学4年の奥田愛基(あき)さん(23)。 ゼミで政治学を学んでいる奥田さんは、立憲主義に反する安保法案の成立を許すことはできないと、今年5月SEALDsを立ち上げた。
  「何か革命を起こそうとか、国家を転覆しようとか、そんなこと言ってないんですよ。ただ、憲法を守って欲しいということです。 コントロールの効かない安倍政権を見ていると、第二次世界大戦と同じ過ちをくり返しそうで」
  SEALDsが国会前でデモを始めたのは今年の6月5日。当初8百人だったデモの参加者は回を重ねる毎に増え、 8月30日には正門前の大通りを占拠するに至った。


コールする奥田愛基さん

  午後6時半、強行採決への無念さを吹きはらうかのように奥田さんはコールした。
  「憲法守ろう! 戦争反対!」
  SEALDsの活動に賛同して、地元でグループを作った地方の若者も合流してきた。歩道で座り込みを続けていた市民も、声をあわせる。
  現場は警官隊が二重三重に取り巻き、ロープで固定された鉄柵が設置されている。デモの参加者は狭い歩道に押し込められた格好だ。 安全確保のため派遣されている弁護士たちは、「表現の自由を制限する過剰警備だ」 と批判をしている。
  午後6時50分。メガホンを担いだ若者を先頭に、集団が移動を始めた。向かったのは大通りの端、正門から一番遠いところだ。 一部、開閉可能な鉄柵があった。彼らは警官隊の制止を振り切り、通行止めになっていた一番右側の車道に出た。
  「強行採決、ゼッタイ反対!!」
  300メートルほど先にライトアップされた議事堂が見える。左には、彼らが 「かまぼこ」 と呼ぶ機動隊の護送車が隙間なく並ぶ。 右には、歩道いっぱいに詰めかけた市民が声援をおくる。

コールするSEALDsのメンバー

  「安倍はやめろ!!」
  「安倍はやめろ!!」
  視線を前に、若者は進む。警官隊は手出しができない。彼らに続いて数百人の市民が列をなす。 降り続く雨で濡れる車道には、回転する赤色灯の光りが反射する。
  行進は正門前の横断歩道にまで達し、交差点付近でコールをしていた仲間とつながった。コールは大合唱となり響き渡った。
  隊列の先頭にいた一橋大学2年の正木純さん(20)はこう話す。
  「きょうは特別委員会を傍聴していました。 採決が強行されたとき、大切なものが音を立てて崩れたように感じました。でも、ツイッターやラインで飛び交う仲間の声にあきらめはありません。 もし成立しても、絶対に運用させないよう取り組みを続けたい」

  実家が沖縄の普天間基地の近くにある、国際基督教大学4年生の元山仁士朗さん(23)は、SEALDs RYUKYUUの中心メンバーとして活動してきた。
  「警官隊で市民を封じ込め、戦争法案を押し通そうとする安倍政権のやりかたは、辺野古での基地建設と同じだ。 力で平和を守るのは時代遅れだと、戦後70年をかけて学んできたはずなのに。今回法案に賛成した議員は、次の選挙で当選させない」