個人情報取り扱い 市、対応ちぐはぐ (新潟日報 2006年9月9日) 個人情報保護法が昨年四月に施行されて以来、個人情報とプライバシーをめぐる問題が増えている。 膨大な個人情報を保有する新潟市では、同市民病院の医療過誤に伴う損害賠償で、患者の匿名化をめぐる結論が出ないまま、議案書に実名を掲載し続けている。 一方で、小学校教諭が児童の個人情報が入ったパソコンを紛失しても、学校名を公表しないなど、ちぐはぐな対応が起きている。 具体的な事例を踏まえて、個人情報とプライバシー保護に詳しい梓沢和幸弁護士に聞いた。 梓沢和幸さん(弁護士)に聞く プライバシーと混同 公人の略歴は監視の対象 ─個人情報保護法施行以降のプライバシー、個人情報保護の流れをどうみていますか。 「プライバシーと個人情報という言葉が意識的、無意識的に混同されている。プライバシーの定義は、一般人ならば知られたくない私的な事柄で (いまだ) 非公開のこと。 キーワードはメディアだ。新聞やイエロー雑誌が人の嫌がることを書く、(これらから) 守ろうと生まれたのがプライバシーの概念だ。 一方、個人情報は氏名、住所など個人を識別する情報をいう。社会生活を営む以上、公的な場所では必要なことで、これをプライバシーとはいわない」 ─医療過誤の際、損害賠償の議案書に、患者の実名を載せることは必要と考えますか。 「この間題では二つの対立する利益がある。住民の監視、物事を公にする利益と、患者の医療上のプライバシーを守ること。どちらも大事で両立させなければならない。 プライバシーでいうと、医療情報は特に人に知られたくないこと。HIVやハンセン病などがよい例だ。ミスの内容、公費支出の責任など公的な事柄と違い、 患者の名前は (議会の審議に) 不可欠とはいえない」 ─住民の監視、公の利益をどう担保しますか。 「医療過誤に対し審査請求をする市民に、(実名は) 最終的には公開されてもよいとは思う。ただいきなり議案書に出るのは反対だ。 名前を出すかどうかは (第三者の) 情報公開審査会などが判断する。議会では口頭で話しても、議事録には載せない配慮もできるのではないか」 ─市国際交流協会理事長の略歴の公表を拒んだ市の担当課の対応をどう考えますか。 「個人情報とプライバシーの混同がある。年齢を出すのは当然だ。高齢でいいのか、癒着がないのか、年齢も職歴も監視の対象になってしかるべきだ。 また、個人情報保護法の三十五条二項では、報道機関は同法の適用を受けないとなっており、(正当な理由がある) 取材に対し個人情報を提供するのは、 問題がないとなっている」 「公の人のプライバシーは減縮される。公人は、公的な領域がその人の生活で増えていく。プライバシーの範囲は、機械的な物差しではなく、 社会的地位によって決まる」 |