住基ネットに反対する国分寺市民の会

〈目次〉
国分寺市議会議長への陳情書
国分寺市議会議員への手紙 (2003年6月18日)



国分寺市議会議員への手紙 (2003年6月18日)

国分寺市議会議員の皆様へ

    国分寺市東元町2-20-10-702
住基ネットに反対する国分寺市民の会 代表
2003年6月12日

一、この手紙は、国分寺市長において、国分寺市民の氏名、住所、その他住民基 本台帳記載の個人情報を蓄積したデータベースを住民基本台帳ネットワーク システムに接続しないよう、国分寺市議会が適切な議決をすることを求めるものです。

二、あわせて、市議会議員として、市民に責任を果たしていただくため、 住基ネットについてのご見解を示していただきたいと願うものです。
  この手紙を差し上げるに至った私たちの考え方を述べさせていただきます。

三、
1、 国分寺市長が、昨年の住基ネット仮稼動に際して、国分寺市民の個人情報を 住基ネットに接続しない措置をとったことは、市民のプライバシーを保護す る措置として市民に期待を抱かせるものでした。
  しかし、個人情報保護関連五法が国会を通過したことを理由として、本年8 月の本稼動の際に国分寺市民の個人情報を接続すると表明したことは失望と 不安を呼び起こしています。
  それは次の理由によります。

2、 市民が不安を抱く理由の第一 ――プライバシーが危ない
  総務庁がすすめている住基ネットは、次のとおり、市民のプライバシーを危険にさらす可能性があります。

@ 住基ネットは全国の自治体が管理する住民基本台帳に記載される住民票コー ド番号、氏名、住所、生年月日、性別、変更履歴の6項目の本人確認情報を ひとつのネットワークに接続し、国の行政機関が個人の検索確認に利用する システムです。全国に3241ある、市、区、町、村などの自治体のすべて において、独立のネット管理室があって、プライバシー保護について教育を うけた専任の係員がいるという環境がなければ、国分寺市民のプライバシー も、1億2692人に達する国民のプライバシーも守ることはできません。
  なぜなら、ひとつのネットワークにつながれる以上、全国の自治体の端末で、 不正なアクセスが行われ、国分寺市民の個人情報が覗き込まれることを防止できないからです。

A 日弁連が2002年6月から7月にかけて行った自治体アンケート(回答率46パーセント) によると、住基ネットの専任職員をおいていない自治体は回答の6割におよび、回答した自治体 の7割が民間業者に管理を委託しています。民間の業者への管理が十分にできているという保障 はありません。
  住基ネット以前のことですが、自治体の個人情報管理をまかされた民間業者が21万7617 の個人情報を外部に流出させ、自治体が損害賠償責任を負った例(宇治市大阪高裁平成13年1 2月25日判決)もあります。
  つまり、国分寺市の首長や職員がどれだけ誠実に個人情報管理をつくしても、力及ばぬところ で市民のプライバシーが裸にされてしまうおそれがあります。
  また、長野県田中知事は、県内の120市町村のうち27市町村で住基ネットとインターネ ットが利用できる庁内LANとが物理的に接続されていたという点について、第三者が侵入す る危険性が高いことを認め、守秘義務がある権力側と住民以外に、情報漏えいが想定されうる と懸念を表 明しています (2003.5.31朝日新聞朝刊等)。インターネット経由でア クセスが殺到し、情報流出の恐れがあるのす。

3、 市民が不安を抱く第2の理由――番号による管理
  住基ネットシステムでは、国民一人一人に番号がつけられます。
  住基ネットは行政による本人確認のためのシステムですが、264の行政事務に使われるとさ れています。
  いったん本人確認のために氏名住所等の個人情報が使われると、それは住基ネット番号とと もに行政機関ごとのコンピューターに記憶されます。
  そしてある個人の履歴、個人の行動の軌跡を調べようとするときは、番号をつかって一瞬のう ちに名寄せができるのです。(このたびの行政機関保有個人情報保護法でも名寄せは禁止され ていません。)
  番号をつけるのは特定の傾向をもった人だけでなく、ありとあらゆる人が番号で管理されるか 、少なくともそれを可能にする仕組みです。

4、 市民が不安をいだく第3の理由――思想、信条、宗教、病歴、前歴など
  扱いに繊細さを要する情報(センシテイブ情報)を集めないとの法律の規定がない。
  住基ネットが国民監視に使われないというなら、微妙な情報は集めることを禁止するという法 律の条文がなければならないのに、行政、民間いずれの個人情報保護法にもその規定がありません。

5、 個人情報コントロールの主体は国民一人一人であるとの規定がない──個人情報コントロール権の規定がない。
  高速道路で車を運転すれば、運転者と助手の写真と車のナンバーがすべて記録される(ナ ンバー読み取りシステムーー警察のNシステム)ことはすでに知られたことです。
  また駅の改札口には監視カメラがいつもまわっています。
  こうした記録と、本人確認がなされた行政個人情報が番号で名寄せされないという保障はま ったくありません。これらの個人情報記録が何のためにいつまで、どこに保存されるのか、 を知り、誤りや異議があれば削除訂正させる権利と手続きは法律で保障されていません。
  自分の情報なのにそれを左右する権利を保障されておらず間違いの訂正も、収集の拒否もで きないのです。

6、 市長が負う市民への責任
  住民基本台帳法36条の2は、市町村長の住民票の記載事項の漏洩、滅失、毀損の防止のた めの措置をとる義務をうたっています。
  以上のようにプライバシーが裸にされ、個人が行政によって管理、監視される危険がある以上、 市長はこれを防止する法律上の義務をおっているのです。
  また国分寺市個人情報保護条例10条、11条は、目的外利用、外部提供の禁止、オンライ ン結合の禁止をうたっています。
  安全が確認されない以上、市長は法律上、条例上の義務を遵守して、毅然として住基ネットへ の接続を拒む措置をとるべきであると考えます。
  そして市議会議員の皆さんは市長にそのように義務を遵守させる責任をおっていると考えるものです。


四、ご回答をお願いします。
  以上のような私たちの考え方について、さまざまなお考えがあるでしょう。
  議員としてとるべき態度についていまだ見解が固まっていない方もいらっしゃるかもしれません。
  いずれにしても、皆さんが市議会でとられる行動が市民一人一人の人間の尊厳にかかわることだけ に、市民とみなさんの意見の交流が生き生きとなされることが大切だと考えるものです。
  つきましては、この手紙についてのお考えをお聞かせいただきたく、ご回答を1週間ほどでいただけ れば幸いです。

ご回答の便宜のため、ご回答用の用紙