エッセイ     梓澤和幸

法然上人父上の言葉
(3月26日)

  3月23日、浅草西光院という、私の家の菩提寺に墓参した。東本願寺の近くである。
  私たち兄弟を慈しんで育ててくれた父、母の眠る墓である。
  1945年3月10日の空襲で灼かれた痕が墓石に残る。
  お寺のご住職が、庫裏に次の法然上人の言葉を大書していた。
  「遺恨を結ばば、その仇世々に尽き難かるべし」 (法然上人父上・漆間時国公ご遺訓)。
  恨みは次の恨みを生み、武力による報復は次々と報復を呼ぶに違いない」。
  そして、 「戦争反対」 という字が大きく掲げてあった。
  僕は、自身に思った。もっと自然に、もっと普通に、家族や親友の苦境を思うように、 殺されている一つ一つの命のことを考え、行動しようと。