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受刑者処遇について 弁護士 殷勇基 (日弁連新聞2001年1月1日)

  1.日弁連と法務省との受刑者処遇についての勉強会の第2回 (2000年9月19日)、及び第3回 (2000年11月22日) のワーキンググループについて報告する。

  2.第2回ワーキンググループ (会合) は、2000年9月19日午後1時30分から午後5時30分まで日弁連で開かれた。日弁連からは西嶋・日弁連拘禁二法案対策本部事務局長ら12人、法務省から小畑・官房審議官、梶木・総務課長ら10人が参加した。
  まず、前回の第1回ワーキングプループでの法務省側プレゼンテーション (説明) に対して日弁連からの質疑が行われ、これに対する法務省からの応答があった。 「国内産業の空洞化、不況等の影響で刑務作業の作業量の確保が難しくなっている」、 「今後はリサイクル製品などの製造などにも着目していきたい」、 「各部門で刑務所職員の絶対数が不足しているが、予算要求しても通らない。司法改革の議論でも、司法の 「出口」 にあたる矯正現場の話しにまではなかなか目配りされない」などの説明があった。
  続いて、 「刑務作業の指定」 について法務省側からプレゼンがなされ、現状での受刑者に対する刑務作業の割り当て方法や、作業指定の歴史について明治初年の 「監獄則並図式」 (かんごくそくならびにずしき) にさかのぼっての説明がなされた。
  対して、日弁連側も、@現在の刑務作業の内容が貧弱で社会復帰に役立たない、A外部通勤制度(受刑者が刑務所外に通勤する)の必要性、B一定範囲で受刑者に作業の選択権を認めるべきこと、についてプレゼンを行った。
  最後に、法務省側が 「職業訓練」 についてプレゼンを行い、受刑者に意欲のある者が少ない、などの説明がされた。

  3 第3回ワーキンググループは、2000年11月22日午後1時30分から午後5時30分まで法務省で開かれた。日弁連から西嶋・日弁連拘禁二法案対策本部事務局長ら、法務省から小畑・官房審議官、梶木・総務課長らが参加した。
  まず法務省側プレゼンテーションが、 「作業時間」、 「作業賞与金」 について行われた。ここでも明治にさかのぼって歴史の紹介が行われ、例えば、明治41年の作業時間は7〜11時間で、夏は11時間、冬は7時間、というふうに変動していた、などの説明があった (現在は1日8時間、週休2日)。
  作業賞与金については現在の平均が1カ月あたり3000円程度 (時給20円) 程度にすぎないこと、諸外国の現況について報告された。
  次いで、日弁連側のプレゼンテーションとして、 「刑務作業における賃金制の提案」、先の合同海外視察時のオーストリアでの調査結果についての説明がなされた。オーストリアでは受刑者への支給金額を引き上げるために連邦の矯正局長が率先して賃金制を導入したことなどを説明し、日本でも検討課題に値することを主張した。
  続いて日弁連側から、 「賃金の試算」 と 「フランスの状況」 についてそれぞれプレゼンがなされ、賃金制を採用したとしても、受刑者には、食費や社会保険料を控除した金額を支給するとして、その試算結果を説明した。
  またフランスでは、月額平均は600〜2000フラン (8400円〜3万円前後) であること (さらに実際の購買力を考えるとさらに高額と評価しうること) が報告された。
  さらに法務省側プレゼンテーションが 「作業安全衛生管理と手当金」 についてなされたが、これに対し、日弁連側から、 「刑務作業中の労働災害に対して支給される 「手当金」 が従来、恩恵的性格のものにすぎないとされ、支給金額が低すぎる」、 「刑務作業に対しても労災保険を適用したり、受刑者に特別な保険制度を創設するなどして、改善を検討するべきだ」 との意見が出た。
  最後に、日弁連が、今後の勉強会の進行や、勉強会で討議したい事項として、受刑者の分類基準の見直し、NGOとの連携、受刑者と被害者との和解プログラム、外出外泊制度、面会、電話利用などを提案した。
  午後6時からは、海外調査報告会を兼ねて懇親会が開かれた。