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個人情報保護法 勉強会 (2002年7月5日)

  2002年5月23日、一橋大学学内に於いて梓澤和幸が学生を対象に個人情報保護法の勉強会を開催しました。
  以下は当日参加した学生からの感想文です。

  『個人情報保護法。非の打ち所のない名前である。個人情報の保護そのものに異議を唱える人などいるはずもない。私はもともとこの都合の良すぎる名前に胡散臭さを感じていたが、今回の勉強会を終えてその問題点をより具体的に知ることが出来た。
  この法案を読んでみると、国民のための法というより、行政のための法であるのではないかと思える。それは法運用に行政の裁量の幅が広いこと、行政諸機関が適用除外になっていることからも分かる。
  行政にこそ個人情報保護のモラルが求められているのは、防衛庁の情報公開請求者リスト問題や、資源エネルギー庁の外郭団体が原発拒否者リストを作成していた問題などから明らかだろう。この問題の原因はもちろん役人のモラルハザードによるものではあるが、自分たちにとって目障りな人物の思想信条などの情報をリストにしてチェックしたいという強いインセンティブが働くのは当然のことである。私だって彼らの立場になれば、規制さえなければ同じことをしたと思う。だから法が必要なのである。今回の問題もより強い法があれば防げたかもしれない。行政の個人情報保護に対する甘い姿勢が露見した以上、行政諸機関を適用除外にすることには理解が得られないだろう。
  疑問なのは、この法の実効性である。情報というものは姿かたちがないものである。どうやって取り締まるのだろうか。おそらく先の事例のように内部告発がその主な方法になるだろう。しかしその内部告発は同法案によって規制されかねないのだ。私はもっと別のやり方で個人情報の保護をするべきだと思う。たとえば、個人情報を取り扱う企業(ほとんどすべてであろうが)の情報公開を義務付けるなどやり方は様々あるはずだ。

  私がこの問題を通して強く感じたことは、 「民主主義や国民の権利は、普遍的かつ永遠に存在するものではなく、自らそれを主張し、行使しなければいつの間にか消え失せてしまう」 というしばしば聞かれることが、単なる警告に止まらないということである。』