東京経済大学講義レジュメ 梓澤和幸


今年度の冬学期より東京経済大学にて講義を担当することとなりました。
以下、講義にて使用したレジュメを掲載いたしますので、是非ご参照下さい!

〈目次〉
1 弁護士って何だろう?―弁護人依頼権 (2004年10月25日)
2 ポリストライアルをどう防ぐか?―弁護人依頼権 (続) (2004年11月08日)
3 憲法はなぜ人権を保障するのか?―立憲主義 (2004年11月22日)
4 表現の自由の歴史と現在 (2004年11月29日)
5 在日外国人 (2004年12月13日)




表現の自由の歴史と現在 (2004年11月29日)

1.表現の自由の保障範囲
  a 集会、結社、言論、出版その他一切の表現の自由 (憲法21条1項)
    報道の自由、取材の自由、情報の受け手の自由 (知る権利)
  b 検閲の禁止 (憲法21条2項)

2.表現の自由はなぜ大切な人権か。
  個人の自己実現
  国民主権と民主主義
  表現の自由の優越的地位と司法審査における2重の基準
  事前規制の禁止、明白性の原則、明白にして現在の危険、LRA (中立規制の場合)

3.表現の自由が、抑圧された時に、悲劇がおこる
  明治憲法下の表現の自由抑圧法制
  治安維持法、治安警察法、出版法、新聞紙法、軍機保護法

  石川啄木の歌
     売ることを差し止められし
     本の著者に
     路にて会へる秋の朝かな

     忘られぬ顔なりしかな
     今日街に
     捕吏にひかれて笑める男は

  明治憲法下の表現の自由の抑圧、知る権利の抑圧、特に戦争、軍隊に関する情報の閉塞状況
  統帥権の独立という論理、現役武官の陸軍大臣就任制度による軍部の政治への介入
  満州事変→日中全面戦争→太平洋戦争
    誰も知らない戦争開始の謀略、
    a 援中ルート根絶論
    b 資源
    c ドイツ頼み
    教訓 a 軍事、戦争を白日のもとに。秘密をつくるな。
        b 驚くべき愚行を少数者にやらせず、公開と批判のもとにさらすこと

4.憲法21条の下での情報の閉塞状況 ── 日本現在その1
  防衛庁によるイラク・サマワの自衛隊の動向取材への抑圧
    合意による規制
      1 装備  2 部隊の位置  3 部隊の活動情報  4 防護手段  5 情報収集手段に関する情報
      6 警備関連情報  7 米軍情報  8 生命安全に関する情報  9 信頼関係情報
      10 その他部隊が定める内容
    自衛隊法の改正 法122条、96条の2別表4、
    武力攻撃事態法と指定公共機関
      基本計画を定め、提出し、その通りに行う義務
      武力攻撃事態 (事態の発生または明白な危険が切迫している事態) のもとでは、
      NHK、民間放送は政府の指示のもとに警報、避難指示、緊急通報の義務
      →、広報、批判の手控え
    個人情報保護法

5.アメリカにおける freedom of the press と日本との対比
  ・ゼンガー事件
  ・国旗焼却事件と沖縄知花国旗損壊事件
  ・1984年共和党大会へのデモの中でもジョンスンの国旗焼却行為 (奥平334ページ)
  ・ベトナム戦争とメデイア (1971年6月中旬) ニューヨークタイムズとワシントンポストの
   「合衆国のベトナム政策の決定過程」 という文書の政府による差し止め命令申請却下
  ・1960年代のアメリカ公民権運動とメデイア
  ・イラク戦争では。

6.日本の現在その2 ── 市民の自由への抑圧
  イ 立川テント村事件
  ロ 公務員のビラマキ抑圧事件
  ハ 公衆便所への落書き事件

7.問題点と展望
  市民の名誉、プライバシーとの衝突と調整の理論が必要
  (次回に柳美里事件、文芸春秋事件、をとりあげる)
   イ メデイアの自由でなく、市民の人権として
   ロ 救済の機関を意識して
   ハ 司法機関の改革

※参考文献
太平洋戦争 (家永三郎著 岩波現代文庫)
誰のための人権か (梓澤 和幸ほか編著日本評論社)
日本に表現の自由はあるのか (田島泰彦著岩波ブックレット)
表現の自由が危ない (飯室勝彦著 花伝社)
表現の自由を求めて (奥平康弘著 岩波書店)

任意レポート
1.「疑惑は晴れようとも」 河野義行著
2.「在日外国人」 拙著