東京経済大学講義レジュメ 梓澤和幸


今年度の冬学期より東京経済大学にて講義を担当することとなりました。
以下、講義にて使用したレジュメを掲載いたしますので、是非ご参照下さい!

〈目次〉
1 弁護士って何だろう?―弁護人依頼権 (2004年10月25日)
2 ポリストライアルをどう防ぐか?―弁護人依頼権 (続) (2004年11月08日)
3 憲法はなぜ人権を保障するのか?―立憲主義 (2004年11月22日)
4 表現の自由の歴史と現在 (2004年11月29日)
5 在日外国人 (2004年12月13日)




在日外国人 (2004年12月13日)

1.中国と日本の首脳の交流がとだえて3年という記事が続く。
  自民党安部幹事長代理の発言にみられるように、中国の態度は内政干渉だといわんばかりの反応が目立つ。
  首相の公式参拝はまずいよなという人々もその理由をはっきりし切れていない人が多いのではないか。
  なぜこの問題がおこるかを伝えていないメデイアにも責任がありはしないか。
  靖国にはA級戦犯合祀問題があるのである。
  1978年10月17日、東京裁判で死刑を宣告され、執行された7名のほか獄中で死亡したりした人々計14名がこの日合祀された。
  刑死の7名とは次の面々である。
   東条  英機  1941年戦時内閣総理
   広田  弘毅  1936年同上
   板垣征四郎  1929年 関東軍高級参謀 (満州事変中心)
            1932年 満州国軍政部最高顧問
   土肥原賢二 ハルビン特務機関長 溥儀皇帝を脱出させて満州国皇帝として擁立することに貢献
            1938年上海土肥原特務機関
   松井  石根 南京事件当時の華中方面軍司令官
   武藤   章 参謀本部作戦課長、盧溝橋事件後処理の強硬派、1939年軍務局長
   木村兵太郎  1938年関東軍参謀長、1941年陸軍次官

  東京裁判というと、英米が日本を裁いたという印象が強い。刑死者が中国に対していかなる戦争犯罪をおかしたのか、という視点が光景に退きがちだ。
  だが、7名のうち一人の文官である広田氏を除く軍人たちの軍歴をみると、1931年の満州事変にはじまる中国侵略にいかなる役割を果たしたのかが判明する。
  中国侵略で命を奪われた中国の民間人、兵士、強制連行犠牲者の人数は2000万にも及ぶというのは定説である。
  個人、国家に対する損害賠償責任は一切果たされておらず、民事訴訟でも除斥期間の主張が裁判所の判決でまかり通っている。
  かかる状況の中で、A級戦犯をも軍神としてまつりそれを、総理大臣がいまも公式に参拝するとなれば、憤りをもつのは当然だと私は考える。
  かかる仕打ちをされて被害者側の民衆と政府が沈黙しているだろうか。沈黙を要求できるだろうか。
  この背景事実にふれないメデイアは何をしているのか。

a 指定公共機関とテレビ
  図上訓練 11月30日

b イラク自衛隊派遣
  特措法の二つの側面 12月7日 朝日新聞
  イ 復興支援
  ロ 安全確保支援活動
    米兵を60人から数人数回 運んだとのこと

2.在日外国人問題〜来日外国人労働者問題と在日朝鮮人、韓国人問題〜
  来日外国人のおかれた状況
    a 結婚…私が担当した事件から
    b 刑事事件
      イ 傷害事件…えん罪になると入管法へ
      ロ 強姦未遂→無罪
    c 医療
  オーバーステイの法的地位
  入国管理法
    外国人労働者は、30日、60日、90日の在留期限を過ぎると、期限後滞留罪の構成要件に該当し、
    入管法違反の現行犯 (継続犯) となる。このため、裁判所の令状無しでいつでも身柄拘束される可能性がある。
    これが身分の不安定さ、差別待遇のもととなる。
  刑事事件
    えん罪で逮捕され、無実が判明しても入管法違反で身柄勾留が継続され、入管法違反による起訴、有罪が待ち受けている。
  日本の経済政策
    工場のラインを回転させる上で、若年・壮年の安価な労働力が不足している。
    成長を保つためにはこれらの労働力が必要であるが、未熟練労働者には在留の法的地位を与えない。
    (Cf.看護師、介護士については、フィリピン、タイからの導入を認めているが、工場ラインの労働力導入にはあくまで消極的であることに注意せよ)
    この政策の結果、国や地方公団体が切り詰めている負担すべきコストは、年間で1兆1145億円を上回る
  日系人問題
    大企業は「合法的な外国人労働力」を使用したい。そこで1990年以来日本人の子孫である日系外国人に定住者の在留資格を与え、今では23万人が在留している。日系人と来日外国人を加えると、常に45万ないし50万人の外国人労働者が日本の工場労働の現場を支えている。
  ドイツ・フランスの外国人問題
  少子化と外国人問題の関係

3.方向と展望

※参考文献
「在日外国人」 拙著 筑摩書房
「外国人が裁かれる時」 拙著 岩波ブックレット